京都市  平成23年  9月 定例会(第5回)  10月05日-04号


○副議長(安井つとむ) 次に,市政一般について,山岸たかゆき議員に発言を許します。山岸議員。
 〔山岸たかゆき議員登壇(拍手)〕

◆(山岸たかゆき議員) おはようございます。伏見区選出の山岸たかゆきです。民主・都みらい京都市会議員団を代表し,先の鈴木マサホ議員,後の片桐直哉議員と共に市政一般について質問します。市長をはじめ関係理事者におかれては,是非前向きな御答弁をお願いします。
 まずは財政健全化に向けた産業振興の新たな仕組みづくりについてです。それに関連して,本定例会の主な議案である平成22年度会計決算について簡単に触れます。この度,一般会計では3年ぶりに累積収支7億円の黒字となりました。平成20年度に累積収支30億円という過去最大の赤字となりましたが,その後,聖域なき行財政改革,地方交付税の確保等で黒字に改善できました。一方,全会計での連結累積収支では,地方財政健全化法が本格適用された平成20年度当時は306億円の赤字であったのに対し,市バス,地下鉄事業の資金不足額の縮小,上下水道事業の資金状況の改善などにより赤字額が6億円となり,この2年間で300億円も大幅に収支改善できました。特に,市バス,地下鉄事業は現在経営健全化計画に取り組んでいますが,計画の目標を大幅に上回る収支改善となっています。以上から,平成22年度会計決算について財政健全化努力が結実したものと高く評価しますが,今決算をどう総括しておられるのかお伺いします。
 しかし,今後とも行財政運営は予断を許さない状況が続くことは間違いありません。本市は他の政令市に比べ自主財源に乏しく,元々財政基盤が脆弱です。それに加えて,近年は義務的経費が年々増大する一方,市税収入は伸び悩み,特に平成20年秋のリーマンショック以降は減少の一途をたどっています。また,地方交付税等も平成22年度は1,000億円台を確保し,平成23年度もほぼ同額確保の見込みですが,今後十分に確保できる保障はありません。ところで,財政健全化の取組は,特に本市が平成13年10月に財政非常事態宣言を行い,平成14,15年度の2箇年にわたり,緊急対策として新規の施設建設の一時凍結や全職員の給与カットなどを断行したころから強化されました。その後,持続可能な財政運営を確立することが必要不可欠との認識の下,平成16年度から,約1,400ある全ての事務事業を対象に事務事業評価を本格的に実施,政策評価と併せ客観的な評価結果に基づき,予算編成を行う方式を政令市で初めて導入しました。その結果,事務事業の見直しで平成16年度から平成23年度までの8年間で約400億円もの財政効果を生み出しました。このように事務事業評価は事務事業の見直しによる費用削減という形で,本市の財政健全化の基礎となる取組として機能してきました。今後は更に効果を上げるため,昨年我が議員団で実施した事業仕分けのように,より外部の視点を取り入れた形で取り組むことも大切です。
 その一方で税収が伸び悩み,地方交付税等も先行きが見通せない中,攻めの行政経営に取り組むべく,産業振興の分野においては,本市に経済の活性化,雇用,税収増をもたらすような形に評価制度を見直し,本市の財政健全化を更に力強く進めていくことも必要ではないでしょうか。すなわち,その施策が経済の活性化に役立ったのかどうか,雇用,税収増に寄与したのかどうかをきっちりと評価できる仕組みが必要だということです。現行の制度運用では必ずしもそのような形では機能していません。例えば,今後の成長が期待される京都環境ナノクラスター事業については,事業目的が地域クラスターを形成し,地域経済の活性化を図ることにありますが,業績評価を見るとKYO‐NANO会員数を増やすこととなっており,事業目的の地域経済の活性化がどの程度図れたのかが必ずしも問われていません。
 また,知恵産業融合センターについても,その事業目的は京都の伝統技術と先端技術を融合し,それぞれの技術を効果的に生かした新技術,新製品の開発による新たな京都ブランドの創出と,イノベーションを支える人材を育成することにより,京都経済の活性化を図ることにあります。しかし,業績評価を見るとセンターの創設段階であったことが影響したのか,人材育成事業実施件数のほか検討委員会開催回数が指標となっており,本来の事業目的に必ずしも合致した指標になっていない状況です。そこで,経済の活性化や雇用,税収増を担う産業振興関係の事務事業については,その事業が経済の活性化にどれだけ寄与したのか,雇用や税収増にどれだけ寄与したのかを見える化し,事業の効果を検証していくような新たな仕組みを検討すべきではないでしょうか。お考えをお伺いします。
 次に,地域コミュニティ活性化支援及び区役所の権限強化について質問します。今年度より向こう10年間の第2期基本計画であるはばたけ未来へ!京プランがスタートしました。その際の都市経営の理念,本市の都市政策の基本となる考え方は,生活者を基点に参加と協働で地域主権時代を切り開くです。中でも参加と協働は,市長のモットーである共に汗する共汗と相通ずる最も重要なキーワードです。市民が参加し,行政と協働する,そのためには行政がもっと市民に近づき,市民の活動を支援することが求められていることから,次の2点,1,市民の活動拠点である地域コミュニティの活性化,2,市民に身近な区役所の権限強化が大変重要です。
 1点目の地域コミュニティ活性化については,本定例会において地域コミュニティ活性化推進条例案の審議が予定されています。これまで町内会,自治会といった住民組織への加入については,あくまで地域の問題として行政は関わってこなかった事柄ですが,住民組織の加入率低下による地域コミュニティの希薄化を受け,行政が一歩踏み出し住民組織の加入促進を支援しようとするものです。条例案には,地域住民のみならず,事業者や住宅の供給等に関わる方々にも積極的な役割を担わせ,本市も地域コミュニティ活性化を支援することなどが規定されています。確かに今回の条例案は本市の問題点を捉え,基本計画の方針に沿う大変時宜にかなったものと受け止めますが,行政が住民組織の加入促進にとどまらず,できる限り地域の問題解決にも関わり,住民組織の活動を支援することで更に住民組織の加入が促進され,条例案が目的とする住民同士が支え合う,暮らしやすい地域社会の形成に寄与することができるのではと考えます。地域コミュニティには実に様々な問題があります。例えば,道路補修,迷惑駐車,空き家,空き地,ペットのふん尿,騒音,悪臭,煙,日照,葬儀場,隣地境界,隣地の樹木,工作物等の越境,ごみ関連の各種問題,私道関係,違法建築が挙げられます。これらの問題の中には本市が業務として位置付けている事柄もあります。その場合は,笑顔,親切,丁寧,てきぱきを心掛け,窓口を一つにしてワンストップで問題解決を図っていただきたいと思います。それ以外が近隣トラブルの類いです。これに関する本市の対応ですが,条例レベルではごみや中高層建築物関係の規制がある程度です。住民組織の皆さんから問題とよくお聞きする,例えば,空き家,空き地,ペットのふん尿問題のように,問題の当事者が住民組織のエリア外におり,住民組織内で解決に困っているようなケースについては,本市がルールを設け,住民組織の活動を支援することも必要ではないかと考えます。今回,本来行政が関わらなかった住民組織の加入促進に本市が関わろうとしているのですから,住民組織では解決が難しい地域の問題に行政も関わり,地域住民と一緒になって取り組むことで,住民組織の加入促進を支援する姿勢が大切と考えます。お考えをお聞かせください。
 次に,2点目の区役所の権限強化です。本格的な地域主権時代を迎え,市民に身近な行政機関である区役所において,以前から区役所機能の強化と総合庁舎化により,市民サービスの向上や地域の個性を生かしたまちづくりが推進されてきたところです。この取組は今後とも積極的に推進されなければなりません。そのためには区役所の権限強化,中でも予算権限の拡大が大変重要です。その具体化として,平成17年度から区独自の取組について予算要求ができる区政策提案予算がスタートしました。当初は5区5事業でしたが,平成23年度には全11行政区で26事業を数えるまでになりました。またこの間,複数年度の事業について予算措置される改善も行われました。ただ基本計画に掲げるように,区役所が参加と協働の市政推進の役割を存分に発揮するためには,以前から我が議員団が主張してきたように,区政策提案予算の大幅な増額と区役所の裁量で予算執行できる,より柔軟な仕組みが必要と考えますが,いかがですか。
 次に,東日本大震災後の地球温暖化対策について質問します。今年8月に平成21年度の温室効果ガス排出量が発表されました。それによると総排出量は608万トンであり,基準年である平成2年の総排出量772万トンから164万トン,21.3パーセントの削減となりました。これは改正前の地球温暖化対策条例に掲げる平成22年までに10パーセント削減の目標を大幅に達成したことになります。しかしその要因を見ると,平成20年秋以降のリーマンショックに伴う景気低迷の影響によるエネルギー需要の減少に加え,関西電力における電気の排出係数,電気の排出係数とは電気の使用に伴うCO2の排出量を算定するための係数です,この係数が原発の安定稼働で約2割改善したことで,前年と比べた削減量の7割に当たる52万トンは電気の排出係数改善分となっています。このように温室効果ガス排出量の削減が原発の稼働率によって大きく左右される現実があるわけです。
 ところが,今年3月に東日本大震災が起こりました。地震,津波の被害に加え,福島第一原発による放射能汚染が広範囲で発生し,大震災の被害をより深刻にしている状況です。それが原発への信頼問題につながり,現在日本のエネルギー政策の大幅な見直しが検討されています。また8月には,再生可能エネルギーの電気を国が定めた単価で,一定期間電力会社に買い取ることを義務化する再生可能エネルギー促進法が成立し,再生可能エネルギー普及への第一歩が踏み出されました。更に関西電力の原発については,全11基のうち7基が定期点検中であり,点検終了後に再稼働が認められるかどうかの見通しすら立っていない状況です。そのような中,改正地球温暖化対策条例に掲げる平成32年度までに25パーセント削減の当面の目標と,平成42年度までに40パーセント削減の目標を目指し,向こう10年間の地球温暖化対策計画が今年度よりスタートしました。その削減見込みのうちCO2排出量の将来推計を見ると,平成32年度には平成20年度の650万トンから490万トンにまで削減する見込みとなっています。ところが,削減の内訳は電気の排出係数改善分を66万トンと大幅に見込んでいる状況です。前述のとおり,本市の地球温暖化対策は新たな形で今年度からスタートしたばかりです。しかし,温室効果ガス削減にこれまで大きく寄与してきた原発稼働を計算に織り込むことが難しくなってきたことで,今後の温室効果ガス排出量の削減が伸び悩み,特に当面の目標である平成32年度までに25パーセント削減をいかにして達成していくのかを早急に検討し直す必要があると考えますが,いかがですか。また見直すとなれば,電気の排出係数改善分をカバーする温室効果ガス削減に取り組まなければなりません。その際,本市が現在提示している地球温暖化対策の取組以外にも様々な取組があることを市民の皆様にしっかりと提示し,正に共に汗する共汗の姿勢で取り組むことが大切と考えますが,いかがですか。更に中長期的には再生可能エネルギーによる地球温暖化対策が本市においても比重を占めることが予想されますが,今後の取組方針についてもお伺いします。
 最後に,伏見区のシンボルである伏見桃山城の活用について質問します。今年の11月5日,6日の2日間,伏見桃山,中書島周辺を中心に京伏見戦国・城下町まつりというイベントが開催されます。この祭は,伏見城が築城され伏見が大きく発展する契機となった戦国時代に焦点を当て,歴史資源を活用した観光振興や商業活性化の目的で行われます。皆さん11月5日,6日,是非京伏見戦国・城下町まつりへお越しください。御承知のとおり,伏見の街は安土桃山時代に伏見城の城下町として栄えた政治の中心であり,絢爛豪華な安土桃山文化の中心でもありました。しかし,これまでその時代の歴史資源が十分にPR,活用できていない状況です。今回,それらを活用してイベントを実施するのは大変意義あることです。更に1回限りで終わらせず,来年以降も続ける予定と聞いており大変うれしく思います。
 ところが非常に残念なのは,一方で城下町伏見の歴史で観光振興,商業活性化を考えているのに,城下町伏見の象徴で現在は伏見桃山城の名で親しまれているお城が閉鎖されたままになっている点です。伏見桃山城は昭和39年3月に完成しました。当初は大小の天守閣と大孔雀園を中心とする史跡公園でしたが,その後スポーツ,文化施設,娯楽機器等を充実させ,お城のある遊園地,伏見桃山城キャッスルランドとして発展を遂げました。ピーク時は約100万人の入場者でにぎわったものの,その後は伸び悩み,平成15年1月に廃園となりました。その際,お城も解体,撤去される予定でしたが,地元のお城存続を求める強い要望を受け,近鉄から本市へ無償譲渡され平成19年3月に伏見桃山城運動公園として開園しました。開園後,お城はランドマークとして時々ライトアップされたり周辺を散策路として利用されたりはしています。しかし耐震基準を満たしていないこと,電気,水道が1階部分にしか通っていないことなどから,一般市民の建物内への立ち入りは禁止されています。更に,指定管理者により周辺樹木の剪定といった施設管理は行われていますが,施設整備はなされないまま今日に至っています。
 伏見桃山城は遊園地内のお城ということで,何ら歴史的価値のない建物のように一般的には受け止められているかもしれません。しかしその成り立ちを調べると,洛中洛外図に描かれている伏見城を参考に細部は桃山形式で統一し,当時のお金で約6億円掛けて豊臣秀吉の築城当時を再現したものであり決して歴史的価値がないとは言えません。ちなみに大阪城は今年で築城80周年を迎えますが,再建に当たり古い絵を参考に再建されました。また平成の大改修後,天守閣が国の登録有形文化財に指定され,歴史的価値が認められるまでになりました。両者とも再建された経過はほとんど変わりありません。再建が30年余り遅い伏見桃山城も大阪城のようになることも十分あり得ると考えます。
 お城が何ら活用されずに今日に至ったのは,本市の厳しい財政状況により耐震補強費用など4から5億円の費用捻出が難しいことも大きな要因です。更に,お城を運動公園の1施設として位置付けてきたことにもあると思います。限られた予算の中で運動公園を管理運営するには,必然的に野球場や多目的グランドといった運動施設の維持管理に予算を費やし,お城にはほとんど予算が充てられなかったのではないでしょうか。そこで,現在は伏見桃山城運動公園として文化市民局市民スポーツ振興室が所管していますが,お城の文化,観光資源としての価値に着目し,それに見合った部局が所管するとともに,民間アイデアの募集も含め,あらゆる角度からお城の活用を検討すべきと考えますが,いかがですか。ちなみにお城の歴史をたどると,醍醐,向島,淀地域等ともつながりがあり影響が広範囲に及ぶことも申し添えます。また財政状況が厳しいのであれば,二条城の一口城主募金のように広く全国の人々に訴え,伏見桃山城の整備に協力していただくことも考えられるのではないでしょうか。日本の歴史上人気の高い安土桃山時代に栄華を極めたお城であり,テレビ,映画,本などメディアで繰り返し取り上げられているわけですから,全国の人々にきっと理解してもらえるのではないでしょうか。市政の総合的な観点からお考えをお聞かせください。
 最後に,伏見桃山城に関連し,伏見桃山城運動公園について1点要望します。園内で子供連れでも楽しく過ごせるような工夫をしていただくことを強く要望いたします。以上で私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

○副議長(安井つとむ) 門川市長。
 〔門川市長登壇〕

◎市長(門川大作) 山岸たかゆき議員の御質問にお答えいたします。
 まず,平成22年度決算に関する総括についてであります。22年度決算は一般会計で19年度決算以来3年ぶりに7億円の黒字を確保することができ,また全会計を合計した連結決算では20年度の306億円の赤字から22年度は6億円の赤字へと大幅に収支を改善いたしました。市長就任1年目である平成20年度の世界同時不況の影響は極めて深刻なものでありましたが,急激な財政悪化には何とか歯止めを掛けることができたものと考えております。これは市民生活の安心安全をしっかり伝え,京都の未来への展望を切り開く政策を推進しながら,他方で全職員の協力の下に実施した給与カットや職員削減などによる人件費の徹底した削減,市民の皆様の御理解と御協力の下に可能となった48億円もの事業見直しや地方交付税等の増額確保,また経営健全化計画を上回る収支の改善を果たした地下鉄,市バスの利便性向上と経営改善努力など,全庁を挙げた財政健全化の取組が成果を上げたものと認識いたしております。
 しかしながら,今後東日本大震災や急激な円高の影響,また中長期的な納税者の減少や高齢化の進展などに伴い,財政運営は厳しさを増すものと考えております。このためこれまでの成果を踏まえつつ,より一層危機感を持って市政運営に取り組んでいく必要があります。本市の成長戦略とも言うべきはばたけ未来へ!京プランに掲げる重点戦略と行政経営の大綱を推進するための実施計画を本年度中に策定し,都市の成長のための戦略と財政の構造改革を一体として推進するとともに,国に対し社会保障と税の一体改革をはじめ地方財政制度全般にわたる改革を求めることなどにより,特別の財源対策に依存しない持続可能かつ機動的で足腰の強い財政の確立を早急に目指してまいります。
 次に,地域コミュニティ活性化支援についてでございます。京都の最大の財産は地域力であります。しかしながら,近年居住形態や生活様式の変化等に伴い,この京都においてもその力が弱まりつつあると言われており,私も大きな課題意識を持っております。そこで本市といたしましては,今一度地域コミュニティにおける人と人との絆の大切さをお互いに確認し,地域力を更に高めていくため,地域コミュニティ活性化推進条例を本市会に提案させていただいたところであります。この条例に基づき市民の皆様の地域コミュニティの参加意識を高め,地域活動に取り組まれている皆様をしっかりと支援してまいります。とりわけ山岸議員御指摘の地域における様々な課題を解決していくためには,行政が住民と一緒になって課題に取り組むことと併せて,住民組織自身の自治能力,解決能力を高めていくことが不可欠であります。そのため本市といたしましては,地域力を高めるための取組の一つとして,総合的な相談窓口の設置が大変重要と考えており,仮称ではありますが,地域コミュニティサポートセンターの設置を検討いたしております。今後とも京都の誇る地域力を一層高め,一人一人がコミュニティを大切にお互いが配慮し,支え合いながら安心して快適に暮らすことのできる地域社会の実現を目指して努力してまいります。
 次に,区役所の権限強化についてでございます。地方分権,地域主権の実現のためには直接行政を行う基礎自治体,とりわけ市民に最も近い区役所,支所の役割は大変重要であると考えております。区民の皆様の自らの街への夢や願いの実現のためには,まちづくりに向けた自発的な行動とともに,区役所,支所がそうした思いを,区民の皆さんの思いをしっかりと受け止め,スピーディに具体化を図っていく必要があり,この間そのための自治体内分権の取組を積極的に進めてまいりました。山岸議員御指摘の区政策提案予算もその一つでありまして,今では区内の課題の解決のための施策,事業を区民の皆様と共に考える土壌が培われてきたと考えております。更に,今年1月には区民の皆様との思い,夢,希望がぎっしりと詰まった区基本計画が各区において策定されたところでありまして,今後この計画の実現に向けて一層の取組の強化が必要であります。そのため区民の皆様が自ら考え,提案し,行動する取組を区長を先頭とした区役所との共汗によって推進することができるよう,これまでの予算の仕組みを思い切って一新し,仮称ではございますが,区民提案・共汗型まちづくり支援事業として新たに創設し,区長の予算執行に係る権能を高めるとともに,予算の大幅増額を図ってまいる所存であります。
 次に,東日本大震災後の地球温暖化対策についてでございます。東日本大震災,そしてそれに伴う福島第一原発の事故により,我が国のエネルギー政策の根幹が揺らぐ事態となりました。山岸議員御指摘のとおり,本年3月に策定した地球温暖化対策計画は,原子力を基幹エネルギーの一つとして位置付けている現行の国のエネルギー基本計画を前提といたしております。今後国のエネルギー政策の見直しが想定されることから,本市におきましてもその動向を見極めつつ,必要な見直しを検討してまいります。一方で,この夏は節電に関する市民の皆様の意識が大きく高まり,エネルギーの賢い使い方を身近に考え,また実行する貴重な契機となりました。こうした機運をしっかりと捉え,国の新たなエネルギー政策が示されるまでの間におきましても,住宅用太陽光発電の設置助成の枠を1億円この度拡充し,設置をお考えの皆様の御要望にお応えしていくこととしたほか,地域力を生かした低炭素モデル地区である14箇所のエコ学区の認定,地域単位の省エネ活動の成果を引き出す全国初の排出量取引制度であるDO YOU KYOTO?クレジット制度の創設や地域における再生可能エネルギーの集中導入と地産地消を目指すスマートシティ京都プロジェクトなど,再生可能エネルギーの普及拡大の取組や国内外をリードする省エネ対策を一層充実強化してまいります。さらに,再生可能エネルギーを中長期的な基幹エネルギーとして育てていくためのメガソーラー発電所の誘致などの新たな施策にも積極果敢に取り組み,市民や事業者の皆様と共に低炭素社会実現の取組を一層充実強化してまいります。
 私からは以上でございます。以下,副市長が御答弁申し上げます。

○副議長(安井つとむ) 細見副市長。
 〔細見副市長登壇〕

◎副市長(細見吉郎) 私からは2点についてお答えいたします。
 まず産業振興事業についてでございます。産業振興の目的は経済活動を活性化させることにより市民所得の向上,雇用の安定的な確保,更にはインフラや生活サービス提供の財源としての税収増加に寄与することであります。そしてその事業の推進に当たりましては,議員御指摘のとおり事業効果の検証とその見える化に努めることが重要であると考えております。こうした認識の下,平成23年度からの5年間で産業連関表の作成に取り組んでおります。この産業連関表は,京都市内の産業間の取引構造や産業の付加価値を把握できる統計資料であり,これを活用することにより事業実施による所得や雇用などの経済波及効果を事前に予測することが可能となります。なお,事業実施後の経済効果につきましては,国内外の経済動向など様々な事象が影響して生じるものであり,個々にわたって計量的に把握することは難しい面もございますが,例えば議員御指摘の京都環境ナノクラスター事業では事業開始から3年間でKYO‐NANO会員の増加だけではなく,ベンチャー企業を4社創出し,多くの新製品,試作品を生み出すなどの成果もございます。今後,これらを事務事業の評価指標に取り入れるなど工夫いたしまして見える化に努めるとともに,市民,事業者の声をよく聞きながら,間断なく事業効果の検証を行っていくことが重要であると考えております。今後とも事業効果の事前の予測と事後の検証に努めるとともに,その結果を踏まえて所得や雇用の増加,税収の増加に資する産業振興事業を推進してまいります。
 次に,伏見桃山城の活性化についてでございます。伏見桃山城が位置する伏見桃山城運動公園は,お城のある運動公園として平成19年にオープンして以来,スポーツや散策,憩いの場として広く市民の方々に御利用いただいております。中でも伏見桃山城は豊臣秀吉の伏見築城当時の様子を再現したもので,長年市民や観光客に親しまれ,今日でも多くのイベントや映画撮影のロケ地としても活用されております。この天守閣を文化観光資源として活用していくことに関しましては,これまでも検討してまいりましたが,美しい歴史的景観や地域のシンボルとしての価値はあるものの,観光資源としての観点から見ますと交通アクセスの問題や商業施設の距離があること,また耐震診断調査の結果,全ての階層において耐震性の基準を下回っていること等の課題もございます。今後周辺の観光資源や街の歴史的な背景,地域の個性あふれる取組を生かすなど厳しい財政の状況の中ではありますが,広く民間の知恵や活力を生かす手法も含めて引き続き検討してまいります。以上でございます。